羽生結弦

「お鍋にしようかな」私の聞こえるか聞こえないくらいの声をキャッチして、彼は頷く。カート置き場に早足で向かい、軽快な足取りでこちらに戻ってきた。「スーパーで買い…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

「分からない…」正直に伝えた。彼がどんな答えを望んでるかなんて、考えたところで分かるはずがないのだ。「うん、僕にもわからない」私の方を見て、全てを肯定するよう…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

2年前に籍を入れた。身寄りのなかった私の、最高の味方になってくれた。手を伸ばして、私を見つけてくれた。「旦那さん…のいる家のほうが、ホテルより良いかと思って」…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

あー、すみません、ありがとうございます、と笑顔の彼の前には、大きな取り巻きができていた。「すみません！マネージャーです！失礼します！」今まで出したことの無いよ…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

彼の世界の中で、私は歓迎されない存在だったのかもしれない。じゃなきゃ、彼の世界がこんなに変わることはなく、平和だったんだ。「考え事が得意技ですか」私の顔の前で…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

駅のプラットホームは人で溢れている。「芸能人かなあ？」と、彼に視線を向ける人もいた。小走りで彼の前に立ち、少しだけ前を歩く。気分は彼のマネージャーかSP。無事…

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虹色バス-羽生結弦小説-

彼女の優しさにつけ込むのは、最低だって分かってたのに、誰かに救ってもらえるなら、彼女がいいと咄嗟に感じた。沈黙が続く。謝るつもりはなかった。泣いて出ていけばそ…

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虹色バス-羽生結弦小説-

溺れ死んでしまうんじゃないかって、最近思う。絶対王者としてのプレッシャー、作り上げられた羽生結弦という、またもうひとりの、僕じゃない、僕。世界は灰色だった。い…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

「終点ですよ」という車掌の声で目を覚ます。そういえば取材時間を朝早くに組まれてしまい、おかげさまで寝不足だった。体を起こし、彼の方を見ると、私の方にもたれて随…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

窓側に彼を座らせる、二人がけの席。この指名手配犯（彼の中ではゲームステージがそう決定したらしい）は、手にしていた弁当袋から慌てて取り出すと、私の前にも自分のそ…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

羽生結弦小説「グランドエスケープ」#3世界一のアスリートに、「君」だなんて、無意識でも言ってしまったことに罪悪感を感じながら、エスカレーターを上がり、新幹線の…

ちはや

虹色バス-羽生結弦小説-

 羽生結弦小説「グランドエスケープ」#2・心拍数が上がる。取材が行われていたホテルを抜け出し、目にしみるほどの青空の下に晒される。後ろを振り返ると、真っ白な手…

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虹色バス-羽生結弦小説-

羽生結弦失踪。世界中を騒がせいている青年が今、私の目の前で、眠っている。「どこか…どこでもいいから、連れ出してくれませんか？」突然、そう声をかけられたのは、ほ…

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